判決に反映されたジェンダーの視点とは

 


  • 今回の法廷は、女性たちによって下された判決のため、ジェンダーの視点が貫かれていることが注目されました。それは、戦時性暴力の不処罰をなくそうというこの法廷の目的の一つに見事に応えるものでした。
  • 3、ジェンダーの視点から日本政府へ反論
  • 日本政府は、このような女性への残酷な犯罪行為に対して、サンフランシスコ講和条約や二国間賠償協定などで賠償問題は解決ずみという主張をくり返してきました。この日本政府の主張に対して、判決では、こうした条約の交渉過程に女性は参加しておらず、性奴隷制についても取り上げられなかったので、条約の対象外であると反論しています。国際条約の交渉過程や国際法そのものに内在するジェンダー偏向が戦時性暴力不処罰の文化を継続させてきたと指摘しています。
  • 2、「慰安婦」制度を「強制買春」でなく、「性奴隷制」と呼ぶべき
  • 「強制売春」という言葉は男性の見方であり、慰安所のあまりにも残酷な実態を表すには不適当であり、また、売春という言葉が「自発的」「不道徳」を連想させて被害女性を一層苦しめることになるため、「慰安婦」制度を「強制買春」でなく、「性奴隷制」と呼ぶべきだとしています。

    実際、日本人「慰安婦」がほとんど名乗りでていないのは、性産業から軍の慰安所に連れて行かれた女性が多いためといわれますが、判決では、日本人「慰安婦」の存在がはっきりと認定されました。そして、前歴が売春女性であってもなくても、性奴隷制被害者に変わりないことを明確にしています。
  • 1、ジェンダー犯罪としての「慰安婦」制度の全体像に迫る
  • まず、東京裁判で裁かれることがなかった「慰安婦」制度という日本軍性奴隷制に、焦点をあてています。その悲惨きわまりない実態、特色を証言や証拠に基づいて鮮明に浮かび上がらせ、おそらくこれまでで最も包括的に、そして深く歴史的、法的分析をしています。それは、国家が認めた強かんの制度化、奴隷化であり、人道に対する罪と断じています。

    そして、被害者は社会の中で最も弱い立場の年少の女性たちであったと、女性差別、民族・人種差別、階級差別が背景にあることを指摘しています。その被害は、地理的にはアジア太平洋全域に及び、時間的には第二次大戦前から戦争終結まで8年間にわたります。一人ひとりの被害者にとっては、その苦痛はさらに戦後から現在まで半世紀以上も続いています。

    こうして未曾有の規模の戦時性暴力がなぜ起こったのか、判決は「国家、軍国主義、ジェンダー」の項目をたてて、女性たちを天皇の戦争の手段とした日本の軍国主義と家父長制の結びつきをえぐり出しています。


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