「法廷」開催に寄せられたメッセージ (海外から)
それぞれの地域で「慰安婦」問題に取り組んでいるグループや個人の方から、 グループの紹介・日頃の活動報告・「法廷」にむけてのメッセージなどをおよせいただきました。(順不同)- 勇敢な活動家たち、そして女性国際戦犯法廷で正義を求める人々へ
- 「一人一人がいい人だとしても、集団としての『日本人』、国家としての日本を思い浮かべた時に恐怖感と嫌悪感はどうしても拭えない。他国の女性に恐ろしいことを平気でできる国というイメージは簡単に変わらない」と、姉妹のように仲良くなった台湾人と中国人の学生達に言われた事があります。これは加害国の女性としてアジアの歴史とどう対峙するのか改めて問うきっかけになりました。しかし具体的に何ができるのかと悶々としているときに女性法廷を実現させる活動を知り、とても勇気づけられました。アジアの女性達との連帯は歴史を消すことではなく見据えることによって実現するという立場にも強く共感しています。国家権力の名のもとに性暴力を受け、その後長い間多重に差別を受け声を奪われてきた方達が主体となって悪を裁くことの意義の大きさを厳重に受け止め、微力ながら来年そのお手伝いをさせていただけることに深く感謝しております。
三井秀子 (スタンフォード大学)
- 戦時性暴力の過去に立ち向かうことなしに性暴力のない未来を築くことは不可能です。今「立ち向かわない」だけでなく過去そのものを否定する動きに対して、より人間らしい21世紀の世界にコミットするすべての仲間たちが力強く真実を語る人間の輪を広げて行くために、このシンポジウムに心から賛同します。
弘田しずえ (ローマ)
- 私は、著書「日本が知らない戦争責任」(現代人文社、1999年3月)で、日本政府には旧日本軍による性奴隷犯罪の責任者を処罰すべき国際法上の義務があるとの主張、及び国際責務である処罰義務の履行を怠り続けている日本政府には不処罰による被害者への国家補償責任があるとの二つの主張を展開しています。しかし国際的には当然のこの主張は、日本の多くの人権団体・女性団体からさえも十分な積極的支持を受けているとは言えません。ましてや保守的な人々からは全く無視されています。そのような人たちが多数を占め、日本の政治を動かしていることは大変残念なことです。この状態が続くと、日本は再び戦争への歯止めを失い、またもや国家の行為としての戦争と性奴隷犯罪を含む重大人権侵害を犯すのではないかと恐れています。
日本の人々もやがては上記の考え方を受け入れざるを得ないでしょう。法的な根拠と正義が基礎にあるからです。しかし、日本の人々の重大人権侵害への反省に向かう活動は、すべてが遅いのです。それが原因で、日本の司法も、未だに上記の考え方を受け入れていません。日本の司法は、ドイツと違い戦争犯罪の処罰をうけていませんから、このような考え方を受け入れるには強い抵抗があるのでしょう。処罰を今の日本で実現することは、まだ「夢のまた夢」です。日本の今の状況は、ユーゴスラビアで民族浄化の大統領の戦争犯罪を論議しようとするのと似ているようにも思います。今の日本は、戦前と根本的に断絶していないのです。「1940年体制」が続いているとの指摘が正しいのでしょう。
それでも出来ることはあります。問題は、処罰すべき犯罪だったのに処罰しなかったことを確認すること、不処罰は何故起こったのかを糾明すること、今後どうすべきかという論議を広く継続することではないでしょうか。補償問題にしても、不処罰を根拠に補償するという論理によって解決ができるようになるのではないでしょうか。ところが、そのような広範な論議が起きてこない日本の現状が危機的だと思うのです。
事態を根本的に変えるには、ねばり強い長期的な活動が必要です。そのような状況下で、フェミニストの皆様が「戦時性暴力 過去ー現在 にどう立ち向かうか」というテーマで国際シンポジウムを開催され、日本軍による性奴隷犯罪の処罰義務を正面から提起されようとしていることを知り、感動しています。今は絶対的な少数者の活動だと思いますが、これが状況の大きな変化をもたらす、「初めの一歩」になりうると期待しています。今年のシンポジウムばかりでなく、2000年12月に予定された「慰安婦」問題に関する国際女性法廷それに引き続く現代の武力紛争下の女性への暴力国際公聴会の成功を祈ります。戸塚悦朗 (弁護士・ワシントン大学客員研究員)
- 日本軍性奴隷制度のサバイバーたちの叫びに応えることを通じて、過去10年間にわたり関係各国の支援グループの方たちがネットワークを形成してこられました。国境に必ずしもとらわれず、かつそれぞれの歴史的な背景の違いを認識したうえで築かれたこの協力関係は、東アジアの国際関係には従来存在しなかった大切なネットワークであると考えます。
1990年代においては、人権を尊重する政策を実施することが、国際社会において主権国家として認知されるための新たな条件になりつつあると言われます。来年の「法廷」の意義は、社会正義の実現に向けて、このネットワークに基づいて市民が率先して国の進むべき道筋を示すことにもあると考えます。本日のシンポジウムが1年後の「法廷」に向けての有意義なステップになることをお祈りいたします。滝 知則 (イギリス・ウォーリック大学大学院)
- インドネシアではいま、アチェ州におけるインドネシア国軍の人権侵害をめぐって国軍の退役・現役将軍たちが国会で尋問され始めた。女性に対する国軍兵士の性暴力には、50余年前の日本軍の性暴力の実態と奇妙な並行関係がある。B.ムルダニ、S.ハミド、T.ストゥリスノ、ハルトノ、F.タンジュン、ウィラントなど、かつての国軍のスターたちの地に落ちた姿には痛ましいものがあるが、本人たちは自覚していないようだ。新政府の高等検察庁はこれらの権力者を裁くことに及び腰だが、民衆の主張は一貫している。人権活動家ヨピ氏は筆者に次のように語った。「日本軍は如何に戦争するかを教えてくれたが、その戦争の責任を如何にとるかを教えてくれなかった」。日本の「戦争責任学」の欠如は多くのアジア民衆を悩ましているが、インドネシア社会と民衆の間には静かながらも新しい息吹が吹き始めている。
木村公一 (インドネシア、サラティガ)
- ジェンダー・ジャスティスのための女性コーカスは、東京2000年法廷開廷に向けての力の結集を積極的に支援します。
第二次世界大戦下において苦しめられた元「慰安婦」たちの被害と痛みは忘れ去られてはいません。国家や司法の権威はこれらの罪に対する責任を追及し処罰することを怠ってきましたが、人は事実を究明し真実を白日のもとにさらす権利を持つものです。これらのことを世界に広く知らしめることの重要性を私たちは確信します。
人は政治的・経済的理由により、公的な司法制度が女性に対する憎むべき罪の犠牲者たちをいかに見捨ててきたかを明らかにする権利を持ちます。昨今の国際法の発展により、女性に対する犯罪は戦争犯罪や人道上の犯罪と同じように認知されるに至りました。しかしここに至るまでいかに時間を要し、何を犠牲にしてきたか想い起こすことは重要です。私たちの支援する東京2000年法廷はこれらを想起させるものとしての役割を果たすでしょう。ジェンダー・ジャスティスのための女性コーカス
- 私は学生ボランティアとしてVAWW-NET女性国際戦犯法廷の準備活動に関わってきました。私は2000年の戦犯法廷のアイディアに心を打たれ、応援するようになった理由は二通りあります。
まずは、戦争の経験を持たない女性として。私の今までの暮らしの中で、太平洋戦争は歴史の中、それも教科書の中の記憶でしかありません。日本史、アメリカ史、世界史を勉強する中で、戦争下の女性の歴史はほとんど存在しません。戦争の記憶は「勝者」だけ、「権力者」だけ、男性だけの記憶となりつつあります。この歴史の中でsurvivorとして生き残った女性たちの姿を「慰安婦問題」を通して知った時、計り知れない感動と勇気を与えられました。2000年を境に、戦争の記憶そして戦犯法廷の正義、女性の経験を歴史に含めることは、21世紀の平和に向けての重大な前提条件だと思います。
次に、米軍基地反対運動に取り組むアメリカ人として。戦争下での女性に対する暴力が「歴史」だけではない事を沖縄の米軍基地で感じました。もちろん、女性に対する暴力は軍隊に限られた問題ではありませんが、基地内バラックでの集団強かん、路上でのハラスメントなど、日常の生活と軍隊の暴力が共存している現実を自分で確かめた結果、「安全保障」などたまったものではありません。現在、そして未来の女性の安全を保障するためには、戦犯者個人個人だけでなく、暴力組織である「軍隊」そのものを裁く必要があります。2000年の女性国際戦犯法廷がその場であることをかたく信じています。キャサリン・スチール (ヘイヴァーフォード大学、USA) 原文日本語
- シンポジウムにお集まりの皆さん。第二次世界大戦中に女性の権利を侵害する多くの事件が発生し、万を数える無辜の女性の生命が犠牲になりました。運良く生き残った人々も、あるいは落ちつく場所を失くし、あるいは頼る人もいない孤独な生活を送ってきています。戦後、今日にいたるまで、なお多くの武力衝突事件が、世界中で絶えまなく起きていて、そうした地域の女性達は、非人道的な取り扱いを受けています。
まさに21世紀に入ろうとする今、人類は国際交流と団結互助によって知恵を結集して戦争を防止しひいては女性の権利を侵害する事件の発生を防がねばなりません。
1999年12月12日、VAWW-NETはシンポジウムを開催し、各界の専門家や学者を招いて過去から現在までの戦争や武力衝突で発生した女性の権利の侵害事件について検討するとのことですが、大勢の人たちが知恵を出しあい戦争を防止する方法を追求することは非常に意義のある活動だと思います。シンポジウム開催に先だち、簡単ではありますがここに敬意を表しあわせてシンポジウムの成功をお祈り申し上げます。荘国明 (台北市婦女救援基金会理事長) - VAWW-NET Japanさま、この過去と現在の戦時・性暴力問題を結びつける、意義深いシンポジウムの開催を心からお喜び申し上げます。アジアの元「慰安婦」たちが沈黙を破り、自ら名乗り出たのは、自らのために日本政府に正義と賠償を求めるためだけではなく、それ以上に重要なことに、第二次世界大戦中に彼女たちが受けた苦しみを二度と繰り返してはならないというメッセージを世界に送るためでした。
それにもかかわらず、旧ユーゴスラビアからルワンダ、東チモール、そしてコロンビアにおいてと、これまでも世界各地で紛争が起きていますが、これらの紛争では、戦時下で女性への暴力がいかに組織的に行われ、またこれまでにないほどの野蛮な形で繰り広げられるようになったかが明らかです。これらはまさに、過去の戦争から繰り返されてきていることであり、私たちは女性たちが被った暴力をひとつひとつ指し示しつづけ、正義、そして暴力の被害への補償と歴史的認識を求める行動を起こし続けなければなりません。
VAWW-NET Japanによって開催されるこの国際シンポジウムは、過去の女性に対して行われた戦争犯罪と現在も続くそれとを結びつけるための大事な足がかりとなるものです。また世界中の戦時・性暴力問題にかかわる女性、そして男性たちが支持し、連帯して開かれる、来たる2000年12月に開催の「女性国際戦犯法廷」への重要な道筋となるものです。インダイ・サホール (女性の人権アジアセンター・ASCENT) - 人権民主的発展国際センター女性の権利プログラムは2000年「女性国際戦犯法廷」を支持することを再度表明します。今日、世界の多くの地域で武力紛争が女性たちを肉体的、精神的に傷つけています。それは過去においてもそうでした。私たちは過去から学ばなければなりません。そしてアジア太平洋戦争中(1931~45)の日本軍性奴隷制のような女性に対する戦争犯罪と武力紛争下の女性への暴力のつながりを理解しなければなりません。「女性国際戦犯法廷」はそれに寄与することになります。
「女性国際戦犯法廷」は、被害女性たちが証言し、正義を求め、尊厳を回復する機会をつくります。そして、20世紀の歴史を消すことのできない記録として残し、強かん、性奴隷制、強制売春やその他の形の性暴力は女性の人権を侵す犯罪であることを強く表明します。そのような犯罪は戦争犯罪、人道への罪、ジェノサイド犯罪であり、現在も将来も決して許されてはならない犯罪なのです。アリアン・ブルネ (カナダ人権民主的発展国際センター女性プログラム) - 私はシンポジウムにメッセージを寄せるほどの価値のある人間ではありませんが、心から感じていることがあります。日本について伝わるニュースは経済のことばかり、あるいはポケモンのことぐらいしかないこのときに、日本にも他の国の市民と連帯して歴史の重荷に取り組んでいる市民がいるということはどんなにありがたいことでしょう。その重荷は私たちの現代の重荷でもあるからです。ノーマ・フィールド (シカゴ大学教授、『天皇が逝く国で』著者)
- 旧ユーゴスラビアのフェミニストたちは皆さんの「女性国際戦犯法廷」についてのニュースをとても関心を持って追っています。というのは、強かんなどの戦時性暴力は私たちの地域ではこの8年間多くの女性にとって日常生活だからです。そして日本で得られる正義は全ての女性、全ての人類ににとっての正義であると私たちは信じているからです。それは(戦時性暴力が)犯罪であることをを認めせるための私たちの努力をやりやすくするでしょう。ですから、私たちが必要としまた求めているこの正義を得るために「法廷」に関わるすべての女性たち、そして日本の市民たちを私たちは支持しています。レパ・ムラジェノビッチ (性暴力反対女性自立センター・ベオグラード)
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