被告である日本政府の補償についての考え方

 

    • 「法廷」では
    • 「法廷」の初日、今村嗣夫弁護士がアミカス・キュリー(法廷の友・助言者)として証言台に立ち、被告である日本政府の主張と見解を説明しました。「法廷」が正式に出した招請状に対して日本政府は何の回答も示さず出廷しなかったため、日本政府の主張はアミカス・キュリーが紹介することになったのです。

      こうした日本政府の主張に対して、判決は一つ一つ反論して、賠償責任があることを認定しています。日本政府が法的責任を認めないかぎり、「慰安婦」問題の解決はあり得ません。
    • 「女性のためのアジア平和国民基金」と被害女性
    • このように補償問題は解決ずみという認識の下で、1995年7月、日本政府は法的責任ではなく「道義的責任」から女性のためのアジア平和国民基金(通称「国民基金」)を設立しました。これは、「慰安婦」被害女性に対して「国民的な償いの気持ちを表すための事業」であり、民間から募金して償い金を被害者に支払うというものです。このため、多くの被害女性が、国家責任に基づくものではないと、受け取りを拒否しています。にもかかわらず、日本政府は国民基金について国連人権委員会などで宣伝し、償い金支給を強行に押し進めてきました。すでに、支給は終了しています。

      韓国では、ソウルの日本大使館前で、被害者や支援者が、公式謝罪と国家賠償を要求し、国民基金に反対するため、毎週欠かさず水曜デモを行い、すでに800回を超えました。
    • 日本政府が法的責任を否定する主張
    • 第一は、時効です。仮に不法行為があったとしても既に二〇年の除斥期間が過ぎていて、請求権は消滅しているというものです。

      第二は、国家無答責の原則です。国は不法行為の責任を負わない(民法七〇九条)というもので、国家賠償法が施行される前のことに対して、国の賠償責任を認める法的な根拠はないという、民法に基づく請求権の否定です。

      第三は、国際法の基づく個人の損害賠償請求権の否定です。国際法は国家間の権利義務を取り決めたもので、個人は国際法の権利主体ではなく、従って、個人に直接国際法上の請求権が与えられるとはいえないとして、個人の請求権を認めないのです。

      日本政府はさらに、もし仮にこれらの主張が認められず、個人に請求権があったとしても、戦後補償問題はサンフランシスコ講和条約や二国間賠償協定などで解決ずみだとして、法的責任を否定する姿勢を崩そうとはしません。


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