認定された日本政府の国家責任とは
「法廷」の判決は、昭和天皇をはじめとする個人の刑事責任を有罪と認定するとともに、日本の国家責任も認定しました。戦中、戦後両方の国家責任を日本政府に厳しく問うたのです。- 日本政府はどんな賠償をする義務があるのか
- 戦中と戦後の不法行為に対して、日本政府はどんな賠償をする義務があるのかを国際的な例もあげて、判決文は指摘しています。
内容は、
●不法行為の認知
●公式謝罪
●国家による金銭的損害賠償
●記録保存
●犠牲者追悼
●遺品返還
●帰国希望者送還などの原状回復
●リハビリテーション
●ジェンダー教育
●女性のエンパワメント
など
これらの賠償義務は勧告にも書かれており、それを日本政府にどのように実行させるかがこれからの課題です。 - 日本政府の主張への反論
- これまで日本政府は、国際法で個人に請求権はなく、平和条約や賠償協定などで賠償は解決ずみと主張し、法的責任を認めてきませんでした。それに対し、判決文は明快に反論しています。
判決で、日本政府に賠償義務を課す協力な法理論を展開しています。人道に対する罪は個人に対して犯されるものであるうえ、全世界に対する犯罪を構成し、erga omnes(対世的)、つまりすべての人びとを指すので、被害者個人の請求権を条約のような国家間の合意で消滅させることはできないというのです。 - 戦時中に犯した罪の国家責任
- 上記のような戦時中の違反行為に対して戦後日本政府は、果たすべき責任を果たさず、してはならないことを行なった以下の継続的違法行為に対しても賠償責任があるとしました。
●終戦直後証拠となる文書を焼いた
●その後も「慰安婦」制度の公的資料を公表しなかった
●政府高官が国家の関与を否定し続けた
●1993年に関与を認めたが謝罪も資料の公開も不十分だった
●責任者の処罰を怠った
●完全で誠実な謝罪と公式で公正な損害賠償を怠った
●「慰安婦」訴訟に抵抗した
●国連特別報告者の報告に反対した
●政府高官の「慰安婦は商行為で強制連行はなかった」などの暴言に反論しなかった
●「慰安婦」にジェンダー・民族差別的扱いをした
●歴史教科書で未来の世代に伝えるなど再発防止に必要な手段をとらなかった
など
「女性のためのアジア平和国民基金」(国民基金)については、「国家によって加えられた不正について被害者に行う適切な仕組みにはあたらないと認定する」「民間からの募金による基金を国家の責務に果たすための公的な損害賠償に代用することは認めない」と、はっきりと国民基金を否定しています。 - 戦時中に犯した罪の国家責任
- 日本国家の機関である日本軍が戦時中、性奴隷制などの国際法違反行為を犯したことに対して日本政府は賠償すべきという判断をしています。
まず、1937年から1945年までの戦時中に日本国家が推進した性奴隷制や強かんが、以下の条約や慣習法に違反することをあげています。これらの条約や習慣法により非戦闘員に対する残虐行為、人身売買、強制労働の禁止や奴隷にされない自由が確立されていました。
●「ハーグ陸戦条約」(1907年)
●「婦人児童売買禁止条約」(1921年)
●「ジュネーブ条約」(1929年)
●「ILO強制労働条約」(1930年)
●「奴隷条約」(1926年)→日本は批准していないが、当時、慣習法になっていた
また、女性保護とジェンダー平等・人権平等という差別禁止の規範に対して性奴隷制はジェンダーと人種の複合差別という違反行為だったとも認定しました。
[ 無断転載禁止 ]