「法廷」の主催
発足まもないVAWW-NETジャパンに、韓国から、「慰安婦」問題アジア連帯会議をソウルで開くため、90年代に入ってからの「慰安婦」運動を総括してこれからの課題について発表してほしいという要請がきました。当時、8年を経ていた運動を振り返り、まったく取り組んでいなかったのが処罰問題であることに気付きました。この問題は、「慰安婦」運動にとってもタブーになっていたのです。94年の韓国の告訴、告発状を「慰安婦」運動側も支持しませんでした。韓国側は大変失望していたので、「女性国際戦犯法廷」構想についてを、「慰安婦」問題アジア連帯会議の場で提案しました。
それに対して、韓国挺身隊問題対策協議会、北朝鮮の「従軍慰安婦」太平洋戦争被害者補償対策委員会、中国の上海「慰安婦」研究センター、台湾の台北市婦女救援社会福利事業基金会、フィリピンの女性の人権アジアセンター、インドネシアの「正義と民主主義のための女性連合」など、被害女性六カ国の支援団体が「法廷」を共に開くことに合意しました。のちに、マレーシア、東チモール、オランダも参加しました。それぞれの国で、他の団体も準備に協力し、キャンペーンも行われました。
また、東京の国際会議に参加した現代の武力紛争下の女性への暴力問題に取り組んでいる欧米や南米、アフリカなど被害地域以外の女性たちも、この「法廷」に協力したいと「国際諮問委員会」を結成しました。旧ユーゴの女性、ルワンダの虐殺被害者の問題に取り組んでいるアフリカやカナダの女性、イスラム原理主義の暴力と闘っているアルジェリアの女性、女性に対する暴力の問題を世界的に提起した米国女性、国際刑事裁判所キャンペーンをしている「ジェンダー正義のための女性コーカス」の女性などです。
99年初めに加害国のVAWW-NETジャパン、被害国の支援団体、それに国際諮問委員会の三者で「女性国際戦犯法廷」国際実行委員会を結成して、「法廷」の主催団体になりました。国際実行委員会は、被害国、加害国、国際諮問委員会の代表三人が共同代表となって、「法廷」準備のための企画や調整などを行い、判事や検事をお願いする交渉や、各国で「法廷」準備会議を開いたりしました。
まさに、「慰安婦」問題を加害、被害国間だけにとどめず、グローバルな課題に広げて、世界各国の女性たちの力で「法廷」を実現させたのです。国際実行委員会 加害国 日本 VAWW-NETジャパン (代表 松井やより) 被害国 韓国 挺身隊問題対策協議会 (代表 尹貞玉) フィリピン 女性の人権アジアセンター 中国 上海慰安婦研究センター 台湾 台北市婦女救援社会福利事業基金会 北朝鮮 「従軍慰安婦」太平洋戦争補償対策委員会 インドネシア インドネシア女性連合 国際諮問委員会 委員 11か国 11人 代表 インダイ・サホール 法律顧問 テオ・ファン・ボーベン教授 (オランダ・マーストリヒト大学)
ロンダ・カプロン教授 (米国ニューヨーク市立大学
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