どういう人が被告人として起訴されたのか

 


  • 起訴状は、共通起訴状と各国起訴状で構成されています。「法廷」は、個人の刑事責任と国家責任の両方を問うというユニークな試みでした。
  • 日本国家の責任
  • 戦争中の不法行為だけでなく、戦後に不法行為に対して日本国家が果たすべき責任をも問いました。

    さらに、旧連合国政府の責任も問いました。旧連合国が開いた東京裁判で昭和天皇を免責にしたこと、審理の過程で慰安所への言及がありながら戦争犯罪などとして訴追しなかったこと、また植民地出身者は日本国籍所有者だったとして被害者として取り上げなかったことなど、東京裁判のあり方が今日の事態を招いた一因であると、旧連合国の国家責任も判決文に明記されました。勧告でも旧連合国に今後責任を果たすことを求めました。
  • 個人の刑事責任
  • 各国検事団が個別の被害ケースを選んで、それに対応する加害事実を特定し、それを裏付ける公文書資料などの証拠がある中将以上の日本軍上層部と政府高官を被告人として起訴しました。「法廷」の準備の過程で、慰安所に通った一般兵士たちも強かん者として裁くのかと質問されました。しかし、「法廷」憲章で、命令責任、上官責任など指導的な立場にいた人たちの責任を問うことにしたのです。アジア太平洋地域の女性たちに戦時中や戦後に苦しみを強いた「慰安婦」制度の責任者の刑事責任をはっきりさせることが重要だからです。

    たとえば、朝鮮半島から中国・広東などの慰安所に連行された金福堂さんのケースでは、広東に慰安所を創設したのが第二十一軍であることを確かに証明する公文書資料や加害兵士の証言によって、第二十一軍の司令官である安藤利吉を起訴しました。

    このように各国検事団は、被害者の個別の被害に対応する加害者を特定していきました。首席検事は、以上の各国起訴状をふまえて、軍の指揮・命令系統および「慰安婦」制度の設置・運用・統制に関して証拠が確かな日本軍および政府機構(総督府を含む)の最上層部の責任者を起訴しました。

    共通起訴状で起訴したのは昭和天皇を含めて10人で、その内訳は次の通りです。

    1.性的奴隷制について「人道に対する罪」の刑事責任

    昭和天皇裕仁
    東条英機
    松井石根
    畑俊六
    寺内寿一
    板垣征四郎
    梅津美治郎
    小林?造
    安藤利吉   以上9名



    2.フィリピン・マパニケの女性たちへの集団強かんについて「人道に対する罪」として起訴

    昭和天皇裕仁
    山下奉文    以上2名



    これ以外に各国検事団が、各国起訴状で起訴した被告人は合計30名を超えます。被告人の多くは東京裁判・BC級裁判の被告人でした。


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