日本のマスコミは「法廷」をどう報じたのか

 

    • NHKの特集番組について
    • 特集番組を企画したテレビ局はNHKだけでした。「法廷」開催の約2ヶ月前に、NHKからETV特集として「法廷をつぶさに追う」という番組企画案を掲示されたVAWW-NETジャパンは、その趣旨に同意して取材に協力しました。

      ところが、この番組企画のことを知った右翼団体が、放映中止を求めてNHKの建物に乱入するほど大々的な抗議行動をしました。そんな中で、2001年1月30日に「ETV2001シリーズ」として放映された番組は、同意した企画案とはまったく違う内容になっていました。

      「法廷」のフルネームも、主催者も、だれが起訴されたかなどの基本的情報がないだけでなく、法廷の核心である「天皇有罪」の判決の場面もカットされていました。逆に、判決日だけ「法廷」に参加した右翼学者が延々と「法廷」をけなし、「慰安婦」は売春婦でその証言は信用できないなどと発言させているのです。

      番組を作った制作会社の女性によると、NHKでは局内試写と編集のやり直しがくり返された結果、番組が改ざんされたというのです。尊厳回復を求めた被害女性たちは、再び日本の「公共放送」であるNHKによって侮辱され、名誉を傷つけられたのです。

      また、このような改ざんは「法廷」を歪曲して報道したことで、視聴者の知る権利と表現の自由を侵害しました。このため、VAWW-NETジャパンは、NHKに抗議しました。海外の学者グループも抗議署名を集め、国内でも3000人近い署名がNHKに送られました。

      しかし、NHK側は説明責任を果たしませんでした。このまま沈黙すれば、暴力による言論弾圧や、権力に迎合する報道の自主規制を認めることになってしまうため、2001年7月、VAWW-NETジャパンと松井やより代表(当時)が、NHKを提訴しました。

      裁判では、NHK側は「編集権」をたてに番組制作過程は一切説明する必要がないという立場を取り続けました。しかし、この「編集権」は、戦後米国占領下のレッドパージ政策で、経営者を守るために生まれたことなど、日本のメディアが いかに閉鎖的で、経営陣が恣意的に操作できるが裁判の過程で明らかになりました。また、番組制作者が上からの命令で改変を強いられ、そのことに抵抗できず、放映後も固く沈黙している状況から、メディア内部での現場制作者の内的自由のなさも浮き彫りになりました。NHK裁判を通じ、民主主義の核である、知る権利や表現・言論の自由、メディアの報道の自由をどう守るのかという大きな問題提起がなされたのです。
    • 日本のマスコミが報道した「法廷」
    • 伝えられた内容は、「裁判」の記事にもかかわらず、肝心の「昭和天皇有罪」判決を見出しにしたものはほとんどありませんでした。全部で約200の記事のうち、半分が「裁かれた戦時性暴力」「慰安婦制度は国際法違反」などとして取り上げ、残りの半分は、被害女性の証言紹介などでした。天皇の戦争責任は、いまだに日本のメディアではタブーです。
    • 「法廷」を取材した日本のマスコミ
    • 取材者数は、約100名でした。

      全国紙・通信社 56名
      地方紙     22名
      政党関係紙   3名
      テレビ・ラジオ 17名
      ミニコミ関係  34名


      ※新聞は、「朝日」「東京」「北海道」「信濃毎日」「沖縄タイムス」「琉球」「南日本」「赤旗」など地方紙中心でした。

      ※NHKは、「おはよう日本」や午後七時のニュースで放映。TBSは「ニュース23」で放映。

      ※ミニコミ関係は、雑誌やNGOなど。


    • ※ 詳しくはNHK裁判

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