海外のメディアは「法廷」をどう報じたのか

 


  • 「女性国際戦犯法廷」には143社305名のメディア関係者が参加しました。そのうち海外メディアは、95社200名と全体の三分の二を占めました。「法廷」に関する海外メディアの関心は高く、積極的なものでした。
  • 日本のメディアとの違い
  • 日本のメディアが「慰安婦」にさせられた被害女性にのみ力点をおいて加害者責任を避けているのに比べ、海外メディアは紙面を大きく割いて、「法廷」や判決の意義を論じる中で、加害者に視点を移しました。

    「女性たちは戦時の性的犯罪の主な犠牲者であるだけでなく、
    不処罰の文化の主な犠牲者である」(独/ディー・ダーゲスツァイトゥング紙)


    また、ほとんどの日本のメディアが「天皇有罪」に触れず、世界でも最大部数を誇る読売新聞が「法廷」について一行も報じない状況は、海外のメディアには異様にうつりました。

    「世界の注目と日本の沈黙」という
    小見出しをつけて日本のマスコミを批判。(韓国/ハンギョレ新聞)


    「さまざまな意味で新しい地平を開いたこの催しに、
    ニュース価値がないから報道しなかった、とは言えない」(英国/ガーディアン紙)


    朝日イブニングニュース、ジャパン・タイムズといった日本の英字新聞には「天皇有罪」の判決が見出しにならび、デイリー・ヨミウリでさえ法廷の開催を報じたことを考えると、日本における日本語メディアの「情報鎖国」の現状は厳しく、日本のことを日本人が一番知らない、危険な状況になりつつあります。「南京大虐殺」は世界各国が報道したのに、日本国内ではまったく報道されなかった、それと同じメディアの内外格差がいまだに続いていることを、世界が再確認することになったのです。
  • 「天皇有罪」という判決結果の報道
  • 日本の主要メディアには「天皇有罪」の見出しをつける新聞はひとつもありませんでした。しかし、海外メディアの多くが「天皇裕仁に有罪判決」を見出しにならべ、「法廷」の核心は「責任者処罰」であることを明確に伝えました。

    フランスのルモンド紙は「軍部に利用され、それゆえ潔白であると占領軍に表象された天皇像は、いまだに日本現代史の“ブラックホール”」であり、「裕仁の免訴を断ち切ることができれば、日本の“記憶喪失”も解決できる」と指摘しました。
  • 欧米諸国の報道状況
  • クオリティー・ペーパーの多くが「法廷」を報道しました。

    米国のワシントン・ポストは連載記事を載せたほか、フランスのルモンド、ドイツ、オーストリア、オーストラリアの各紙をはじめ、遠くメキシコでも判決が報道されました。

    さらに、米CNNテレビや英国BBCテレビでもニュースで大々的に報道し、大手の通信社であるロイターやAPも各国に配信しました。

    また、2001年12月、オランダ・ハーグでの最終判決ではヨーロッパ各地から50社ほどのメディアがつめかけ、「法廷」を報道しました。
  • アジアの報道状況
  • 韓国では、東亜日報や朝鮮日報をはじめとした九紙が報道し、ハンギョレ新聞は開廷前の12月5日から12月19日まで、法廷関連の記事を30回以上掲載しました。

    中国では、全国に約2000ある新聞すべてが判決を伝え、北京のテレビ局が三元放送(北京・上海・東京)で一時間半の特別番組をつくりました。

    アジアでは、被害女性が参加している北朝鮮の労働新聞、台湾(9紙)、フィリピン(3紙)、インドネシア(2紙)はもちろんのこと、インド(3紙)やパキスタンでも報道されました。


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