BPOの決定に関して声明発表

 


  • ―VAWW-NETジャパンはBPOの決定を大いに歓迎し、
    NHKがこの決定を受け入れるよう、強く要望します!―

  • NHK番組改変事件をめぐり、私たちが7年にわたり裁判を闘ってきたのは、「慰安婦」問題をなきものにしようとする歴史修正主義を許さない、暴力によ る言論弾圧や権力に迎合する報道機関の自主規制を許さない、不正義に沈黙しないという思い、そして、NHKが市民ではなく、時の権力に顔を向けているこの状況を何とかしなければという思いからでした。そのため、裁判を通して市民社会で保障されるべき「知る権利」や「表現の自由」「言論の自 由」「報道の自由」をいかにして守ることができるのかを明らかにしたいと切望しました。

    しかし、昨年6月に言い渡された最高裁判決は、東京高裁が認定した放送番組への政治介入という問題の核心を回避し、NHKら被告の不法行為を認めて「信頼利益の侵害」「説明義務違反」を「特段の事情」の下に認めた原審(高裁判決)を覆し、NHKら被告の敗訴を破棄し、バウネットの附帯上告を棄却しました。

    それどころか横尾和子裁判長は、取材対象者の期待・信頼を保護することは「取材活動の委縮を招くことは避けられず、ひいては報道の自由の制約にもつながる」「(取材対象者の)放送番組編集への介入を許容する恐れがある」という、ひどい見解を示しました。

    この事件で報道の自由を制約・侵害したのは誰なのか、放送番組編集に介入したのは誰なのか。私たちは政治介入問題を蚊帳の外におき、取材対象者に「報道・編集の自由の侵害」の矛先を向けたこの判決に、絶望の淵に叩き込まれたような憤りと情けなさに愕然としました。

    最高裁判決の「勝訴」を喜ぶNHKの姿に、これでNHKは何事もなかったかのようにこの問題を終わりにしてしまうのかという不安を抱きましたが、そんな中、多くの市民がBPO放送倫理検証委員会に番組改変をめぐる真相究明を求める要請を提出し、本日、BPO放送倫理検証委員会がNHKの改変指示に至る一連の行為は、「公共放送NHKにとって、最も重要な自主・自立を危うくし、NHKに期待と信頼を寄せる視聴者に重大な疑念を抱かせる行為であった」との決定を発表しました。

    VAWW-NETジャパンはBPO存在趣旨に立って行われたこの決定を大いに歓迎し、要請に立ち上がられた皆様の勇気と正義を諦めない闘いに、心から感謝の気持と連帯の意を表明いたします。    NHKはBPOの決定を真摯に受け止め、番組改変事件の真相究明を誠実に行い、政府高官らとの距離を保ち、「目指すべき質の追求という番組制作」に全力を尽くし、今後、番組の制作・放送を巡って二度といかなる政治的権力にも影響されることなく、放送の自律・表現の自由を自ら守っていく姿勢を貫くことを心から願います。

    NHKは、BPOの決定に取り組むことが、改変された番組により深い傷を負った「慰安婦」被害者と女性国際戦犯法廷の主催者の被害回復、この問題を巡って失った視聴者・市民の信頼の回復に繋がるとともに、NHK内部の番組制作における表現の自由・放送の自律を取り戻すよい機会と受け止め、その実現に努力してほしいと思います。

    VAWW-NETジャパンは現在、高裁判決・最高裁判決を英文に翻訳し、国連人権理事会や「慰安婦」問題の解決に向けて勧告を出した国際社会に向けて、この事件と事件の不当な「決着」を訴えていくべく、準備を進めています。その過程で、NHKが真実と表現の自由の回復に自ら動き出すことを、心から願います。

    2009年4月28日
    「戦争と女性への暴力」日本ネットワーク(VAWW-NETジャパン)