提訴審に向けてのVAWW-NET声明

 


  • VAWW-NETジャパン声明

    去る3月24日、NHKの番組改ざんを巡る裁判の判決が言い渡されました。判決はバウネットが主張した「説明義務違反」については却下し、「信頼利益の侵害」については取材依頼をしたドキュメンタリー・ジャパンのみに「信頼を生じさせた」ことを過失として、100万円の賠償支払いを命じました。

    取材依頼時に「こういう番組を作りたいので協力してほしい」という取材者の説明が「信頼」できなければ、そもそも取材協力を受け入れるはずはなく、「信頼」を与えることが不法行為であるならば、取材そのものが狭められることは必至です。バウネットは末端にのみ責任を押し付け、番組改ざんをしたNHKやNEPの責任を問わないこの判決を受け入れることはできず、4月1日、正式に控訴しました。

    判決は、バウネットが主張した番組に対する「信頼」を認め、その「信頼利益が侵害された」ことを認定しました。言うまでもなく「信頼利益を侵害」したのは、取材依頼時に説明された番組方針や内容と異なる番組が制作され放送されたからに他なりません。事実認定では「原告らに説明した当初の番組の趣旨から大きく逸脱し、女性法廷を紹介する重要な一部を削除したり、女性法廷の意義を矮小化する学者のインタビューを追加するなどして、視聴者が、女性法廷の主催者や審理対象、審理結果を認識できない番組に改編し、放送した。このような被告らの番組改変・放送行為は原告らの信頼利益を著しく侵害するものであり、不法行為が成立する」と、原告の主張を認めました。ならば、当然、取材依頼時の趣旨を変えたことを取材協力者に説明しないまま「改編」し、それを放送した責任が問われるべきです。しかし判決は、NHKのこうした改編を「編集の自由の範囲内」としました。

    取材依頼時の説明を大きく踏み外す番組を制作・放送しても許されるのであれば、放送事業者は何をしても構わないというフリーハンドを保障することになります。本来、「表現の自由」とは権力から番組制作者の言論の自由を守るものであり、それは視聴者の「知る権利」をも保障するものです。今回の番組改ざんは制作現場の表現の自由をも侵害したものであり、「編集の自由」を放送事業者の絶対的な「権限」として保障するものであり、本来の「表現の自由」の精神を捻じ曲げるものです。

    私たちは控訴審で今回の事件が問題の本質と責任を摩り替えることなく公平に審理されることを強く望みます。

    2004年4月8日
    「戦争と女性への暴力」日本ネットワーク
    (VAWW-NETジャパン)